麻痺性構音障害による鼻咽腔閉鎖不全症を呈した症例にPLP (Palatal Lift Prosthesis) を装着し言語治療を行うことによって, 6ヵ月後に良好に鼻咽腔閉鎖機能を改善することができた症例を経験した.本症例での, PLP完成直後ならびに6ヵ月後における, PLP装着時, 非装着時の口蓋帆挙筋筋電図ならびに鼻咽腔電子内視鏡検査に基づいてPLPの麻痺性構音障害に対する改善の生理学的背景について検討した.その結果, PLPによる鼻咽腔閉鎖機能賦活効果の背景には, 鼻咽腔閉鎖機能の調節に必要な感覚情報が正常に入力されるようになったこと, また非装着時に筋活動の高かった音節では装置によって筋活動が少さくなったことにより関連筋疲労が防止され, また筋活動が認められなかった音節では筋活動が生じることによって関連筋の廃用性萎縮が防止されたことが関与したと考えられた.