われわれは自閉症児の言語発達を, 前言語段階から縦断的に追跡し, 報告してきたが, 言語を獲得する過程で, echolaliaではない「模唱」が生じる場合があること, 言語発達が良好な自閉症児ではこの模唱の発生頻度が高く, 不良な自閉症児では低い傾向があることに気づいた.そこでこの仮説を確かめるために数語以上のspeechを有する, 言語発達途上にあると思われる自閉症幼児16名についてセラピストとの自由な会話を録音して分析し, 模唱の発生頻度を検討した.
その結果言語発達が良好な自閉症児群では模唱の発生率が平均10.3%, 不良な自閉症児群では平均2.4%と有意な差がみられた.これは大人からの言語刺激を受信する能力の差によるものと考えられた.したがって模唱の発生頻度によって後の言語発達を予測することが可能だといえる.