音声言語医学
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人工内耳手術後の成人・小児における聴覚の再学習と可塑性
―言語臨床の観点から―
城間 将江
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1998 年 39 巻 3 号 p. 305-314

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抄録

人工内耳装用成人65名, 小児8名の語音知覚検査結果に基づき, 言語臨床の観点から聴覚機能の再学習や可塑性, および聴覚情報の処理メカニズムについてRetrospectiveに検討した.人工内耳装用による語音の知覚率は個人差が著しく, その個体要因として, 失聴時期と失聴期間が関与することが示唆された.一般に失聴時期が早く失聴期間が長いと言語知覚率は劣化する傾向にあったが, 長期間の失聴でも聴覚の再学習は可能であることが示唆された.ところが, 小児は, 先天性でも3歳前後の手術症例はオープンセットの語音知覚が可能になり, 幼児の脳の可塑性の高さが示唆された.言語習得期での失聴児は, 失聴期間が2年以内の症例は聴覚機能の再学習が早かった.なお, 聴覚情報の音声処理機構については, 成人はトップダウンの概念処理が主であった.小児はボトムアップ処理が先行し, 言語獲得に伴いトップダウン処理併用がみられた.

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© 日本音声言語医学会
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