音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
筋萎縮性側索硬化症にともなうDysarthriaの経時的変化
―第一報: 構音機能の変化に関する検討―
西尾 正輝新美 成二
著者情報
ジャーナル フリー

1998 年 39 巻 4 号 p. 410-420

詳細
抄録

筋萎縮性側索硬化症にともなうdysarthria2例を対象とし, 発話明瞭度が良好な時点から口頭コミュニケーションが困難となるまでの期間における構音機能の経時的変化について聴覚的および音響学的に検討し, 主として以下の結果を得た.1) 構音方法別分析では通鼻音の正当率が高く保持され, 構音が全体的に鼻音化する傾向を認めた.2) 母音では正当率が/a/で高く/i/で低下する傾向を認めた.3) 子音の音素別正当率の経時的変化でも2症例間である程度の共通性がみられ, 軽度期から障害された音素ほど経時的に重症化する傾向が認められた.4) 音響学的分析では, いずれの発話サンプルにおいても発話明瞭度の低下にともない, F1, F2でともに遷移率が低下し, 単音節および単語明瞭度の変化と高い相関を認めた.こうした結果から, 本音響学的パラメーターは構音機能の変化を客観的, 定量的に反映するものと考えられた.

著者関連情報
© 日本音声言語医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top