食道音声, 気管食道瘻音声の音源 (新声門) の開大閉鎖機構を中心に嚥下, 発声, 発話における調節を検討した.無喉頭音声の熟練者を対象として, フォトグロトグラムによる新声門開大度のモニターとともに口腔内圧, 筋電図, 音声などを同時記録し, 解析した.嚥下や食道音声の空気摂取など比較的粗大な運動について, 新声門開大筋としてオトガイ舌骨筋, 新声門閉鎖筋として下咽頭収縮筋を同定した.両者の協調の様子は下咽頭収縮筋が発声における振動部を形成する筋肉として働くか否かによって異なっていた.語中無声音の構音で, 新声門の一過性開大が音源振動の一時的停止に関与し有声無声の出し分けを成立させている可能性が示唆され1例の被験者で下咽頭収縮筋の一過性抑制による新声門開大への協調が確認された.しかし他の6例では必ずしも正常喉頭にみられるような開大筋閉鎖筋の相反的活動の図式を当てはめることはできなかった.