1999 年 40 巻 1 号 p. 8-16
筋萎縮性側索硬化症に伴うdysarthria2例を対象とし, 発話明瞭度が良好な時点から口頭コミュニケーションが困難となるまでの期間における発話速度, 音節の反復速度, および非音声言語機能 (嚥下機能, 呼吸機能など) の経時的変化について検討し, 主として以下の結果を得た.1) 発話速度と音節の反復速度は経時的に低下するばかりでなく, 発話明瞭度がかなり高い時点からすでに際立った低下傾向を示した.こうした結果は, これらのパラメーターが軽度期においては発話明瞭度よりも構音器官の変化を鋭敏に反映するものであることを示唆するものと考えられた.2) 嚥下機能の異常は発話障害に後続して起こり, 単音節明瞭度がおよそ30~40%の範囲内で明らかなむせが出現した.
以上の結果について, ALS患者の評価および治療システムの観点から検討を加えた.