音声言語医学
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注入術コラーゲン
部坂 弘彦
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2000 年 41 巻 4 号 p. 385-388

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抄録

声帯溝症に対するアテロコラーゲン注入の目的は, 声帯の粘膜波動を再出現させることにより今までより良好な音声を獲得することにある.一側性反回神経麻痺の場合は, 麻痺側声帯筋層内に反復注入することにより音声改善を得られる場合が多い.しかし声帯溝症においては筋層内に注入してもコラーゲンの蓄積は少なく, 嗄声が改善せず治療の限界を感じている.これは声帯の運動麻痺がないため, 発声, 嚥下時の筋肉運動収縮によりコラーゲンが拡散するものと推測される.また粘膜下注入しても緊満化するだけで注入後コラーゲンが白色状に残存するが, 声帯の粘膜波動が再出現しないため自覚的音声の改善は少ない.しかし, 粘膜下注入した例はその白色部分が残存することに注目し, 健側声帯の粘膜下に注入してみると非常に良好な音声が長期間持続する症例を経験している.今回動物実験の結果とともに声帯溝症に対するアテロコラーゲン注入の適応について報告する.

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© 日本音声言語医学会
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