音声言語医学
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ヘルペス脳炎による小児の聴覚失認の1例
―その聴覚的評価を中心に―
鈴木 弥生加我 君孝
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2001 年 42 巻 1 号 p. 33-38

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抄録

両側の側頭葉聴覚皮質損傷は, 「皮質聾」ないし「聴覚失認」と呼ばれる特有の病態を惹き起こす.しかし, こうした症例に関する詳細な報告, 特に小児例は非常に乏しい.
われわれはヘルペス脳炎による聴覚失認の1例を経験したので報告する.現在17歳の女児, 生後6ヵ月時にヘルペス脳炎に罹患した.3歳時より音に対する無関心を指摘されている.現在は左半身中心の不全麻痺, 顔面運動失行が残存している.頭部MRIT2強調像では, 両側の側頭葉上側頭回を中心とした高信号領域を認めた.聴覚検査上は, 聴性脳幹反応は潜時, 波形ともほぼ正常にもかかわらず純音聴力検査において平均59dBと中等度の閾値上昇が認められた.行動観察上は音の出るものや音楽に対する興味を示し, 環境音認知テストでは75%の正答率を示した.本症例は言語獲得前に聴覚失認が起こったため, 言語発達は著しく障害され, 視覚的材料を用いても言語の獲得は困難であった.

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