2001 年 42 巻 2 号 p. 129-136
言語発達障害児における表象能力の障害について明らかにするため, 彼らの象徴遊びについての検討が行われてきた.しかし, その結果は多様であり, これまでに統一した見解は得られていない.それらの研究は生活年齢や言語表出レベルを合わせた言語発達障害児と健常児の象徴遊びを比較しているが, そのマッチングの方法に問題があると考えられる.象徴遊びが言語表出よりむしろ言語理解に関係するなら, 被験児のマッチングは言語理解レベルによって行われる必要があるのではないだろうか.そこで本研究においては, 言語理解のレベルを合わせた言語発達障害児と健常児の象徴遊びを比較し, 検討した.象徴遊びはSymbolic Play Test (SPT) を用いて測定した.その結果, 両群間のSPT得点に有意な差は認められなかった.言語発達障害児群のSPT得点をLoweらの換算表により象徴遊びの発達年齢を求め, 言語理解の発達年齢と比較すると有意差が認められた.また, 象徴遊び発達年齢と言語理解発達年齢との間には有意な正の相関が認められた.この結果から, 言語発達障害児における言語理解の遅れは象徴遊びを成立させる表象能力の問題と関係する可能性が示唆された.