2001 年 42 巻 2 号 p. 166-174
失語症の回復過程における左右大脳半球の役割という臨床的な立場から, 脳機能画像と言語機能の問題を検討した.失語症の回復には, 左半球内の機能回復と右半球内の機能活性化という2つの機序が想定されている.実際には両半球を含めた機能的ネットワークの再構築が関与する可能性が高いが, 本論ではまず, 失語症の長期回復経過において左右半球が経時的に異なる役割を果たすことを示唆する自験データを紹介した.SPECTを用いて脳血流量の変化を検討した2つの相補的な実験からは, 発症後早期の言語機能の回復は左半球内の機能的改善と関連し, 一方, その後の長期的な回復には右半球の役割が大きいと推測された.PETや機能的MRIを用いて失語症患者に機能賦活を行う最近の研究からも, 左右半球の役割が経時的に異なる可能性が示されている.SPECTは比較的簡便で, 複数回施行するのに適しており, 脳損傷例の経時的な臨床研究を行うには有用である.