文字獲得前の幼児の韻律単位の発達を, 語を自覚的に分節化させる方法を用いて検討した.刺激語は3音節6モーラ語3語であった.対象児は3~6歳の健常幼児80名 (各年齢20名) であった.音読課題の結果, 36名 (3歳児20名, 4歳児13名, 5歳児3名) が文字獲得前の段階であった.これらの幼児について以下の知見を得た. (1) モーラへの分節化が可能な幼児の割合は加齢とともに増加した.しかし, (2) 3語すべてをモーラへ分節化できた幼児は存在しなかった. (3) モーラと音節の両方に分節化できる幼児の割合が最も高かった. (4) モーラへの分節化が可能な幼児の割合よりも音節への分節化が可能な幼児の割合の方が高い傾向があった.これらの結果から, モーラは文字獲得前に加齢とともに発達するが, 文字を獲得した幼児ほど確立された単位となっていないこと, 音節とモーラの両方が文字獲得前の幼児に心理的に実在していることが示唆された.