音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
小舌症と小下顎症を伴う1症例の構音の分析
阿部 雅子石毛 美代子熊田 政信高戸 毅新美 成二
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 42 巻 3 号 p. 242-248

詳細
抄録

小舌症と小下顎症を伴う症例 (23歳女性) の構音の状態を観察した.なお, この症例は1歳8ヵ月より5歳8ヵ月まで当外来で言語発達と構音の観察指導を行っていた.結果は以下の通りである.
1.構音検査の結果は, /t, d, n, r/は口蓋化構音に近い歪み音になっており, /s, dz, ts/は上歯と下口唇でつくられていたが, これは5歳8ヵ月時の構音状態と同様であった.
2.語音発語明瞭度は平均72.2%であったが, 舌尖を使う音の明瞭度は悪く, 軟口蓋音や口唇音に異聴されることが多かった.しかし, 文章の明瞭度は良好であった.
3.構音動態をダイナミックパラトグラフとX線ビデオで観察した結果, 舌尖音産生時の舌は硬口蓋の後方から軟口蓋にかけて接していた.また, 下顎の動きにより口腔を狭くすることで, 舌が口蓋に接する部位を多くしたり, 下口唇を代償的に使うことが観察された.

著者関連情報
© 日本音声言語医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top