音声言語医学
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聴皮質の発達と可塑性
内藤 泰
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2001 年 42 巻 3 号 p. 264-271

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抄録

聴皮質の一次聴覚野と聴覚連合野には細胞構築だけでなく, 発達期における髄鞘化においても明らかな差がある.ポジトロン断層法 (PET) で人工内耳を介した語音聴取中の言語習得前失聴者の脳賦活を観察すると, 一次聴覚野はある程度活動するが聴覚連合野の賦活は乏しく, 一次聴覚野の機能は先天的に規定される要素が強く, 聴覚連合野の発達は後天的な言語音聴取に強く依存していることが示唆された.また, 言語習得前失聴の小児でも人工内耳を使い続けることで聴覚連合野に語音認知の神経回路が発達し得るが, その発達は視覚言語の発達と競合する可能性がある.一方, 臨界期をすぎると語音認知の神経回路は長期間, 強固に保持されるが, 加えて, 人工内耳で符号化された語音の認知に際しては, 側頭葉の聴覚連合野だけでなく, ブローカ野や補足運動野の活動も亢進することが明らかになった.

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© 日本音声言語医学会
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