補聴月齢の相違が音声の発達にどのような影響があるかを調べることを目的に先天性高度難聴児17名をA, Bの2群に分けて調べた.8ヵ月目までの補聴開始群: A群4名, 8ヵ月以後の補聴開始群: B群13名を対象として, 過渡的喃語, 標準的喃語, 指さし行動, 有意味語, 視線によるコミュニケーション, 補聴器の装用に慣れるまでの期間などについて比較検討を行い, 以下の結果を得た.
1) 過渡的喃語の出現頻度と出現月齢は, A群とB群の間に有意差は認められなかった.
2) 標準的喃語, 指さし行動と有意味語においては, A群がB群に比べて, 出現頻度が高く, 出現月齢が早くなる傾向がみられた.補聴後は, 視線によるコミュニケーションが始まるまでの期間, 補聴器に慣れるまでの必要期間は, A群がB群より短かった.
3) 音声の音響分析では, A群の発声は明瞭であり, イントネーションを伴った.
以上の結果から, 生後8ヵ月までの時期は, 早期補聴・早期聴能教育による良い音声を獲得できる重要な時期であると考えられる.われわれはこの月齢を補聴最適正年齢と呼ぶことを提唱したい.