英単語の書字に関して3通りの訓練方法の有効性について実験的に検討した.対象は, 詳細な認知・神経心理学的検討の結果, 聴覚性言語記憶障害と視覚的認知機能の障害が主症状と考えられた小児である.訓練は通常の英単語の学習方法と, 聴覚的につづりを聴いてアルファベットを覚える方法, さらにこの両者を組み合わせて行う方法の3通りにて行った.その結果, いずれの方法でもべースライン期に比して訓練後の成績は改善していたが, 両者を組み合わせた方法での改善が他の方法に比べて有意に大きかった.単一の障害を有する症例では障害の重症度に応じて, その機能自体を改善させるか, もしくは保たれている機能をバイパスルートとして活用し障害された機能を補うか, のいずれかの方法が取られている.しかし, 症状が複合している本例の場合には両者を組み合わせた方法が有効と考えられた.