音声言語医学
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声帯萎縮に対する遺伝子治療
塩谷 彰浩
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2002 年 43 巻 4 号 p. 438-443

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抄録

反回神経麻痺に伴うものや老化に伴う声帯萎縮では, 甲状披裂筋の萎縮が主たる原因の一つである.この問題に対し, 筋組織に対する強力な栄養因子で, 筋肥大作用を持つIGF-I (Insulin-like Growth Factor I) の応用が期待される.しかし, IGF-Iタンパクそのものを投与する場合は有効濃度の維持が必要で, 局所注射や全身持続投与では応用が困難であり, 遺伝子導入の手法 (遺伝子治療) が有用となる.この方法では, 1回の導入で数週間から1ヵ月にわたり, 局所的持続的タンパク発現が実現できる.ラットを用いて反回神経切断後に甲状披裂筋に筋細胞, 神経細胞の両者に対して強力な栄養作用をもつIGF-I遺伝子を導入したところ, 遺伝子導入後4週の時点で, 有意な筋萎縮改善効果を認めた.これらの結果からIGF-I遺伝子治療は声帯内注入術や甲状軟骨形成術の代用かその増強手段として用い得ると考えられる.

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© 日本音声言語医学会
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