音声言語医学
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統語に対するメタ言語知識の発達
―「の」の過剰生成に対する反応を手掛かりとして―
伊藤 友彦川上 真代
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2003 年 44 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

メタ言語知識とは言語に対する自覚的知識をいう.本研究は, 「の」の過剰生成 (例: 赤いの花) に対する反応を手掛かりとして, 言語の統語的側面に対するメタ言語知識の発達を検討したものである.対象児は3歳から6歳の健常幼児77名であった.「の」の過剰生成を含む名詞句を口頭で提示し, おかしかったらおかしいと言うように教示した.本研究の結果, 以下の点が明らかになった.1) 「の」の過剰生成を自覚的に捉えることができる幼児の割合は3歳, 4歳ではそれぞれ11.8%, 30.0%にすぎなかったが, 5歳では75.0%となり, 6歳では95.0%に達した.また, 2) 「の」の過剰生成をおかしいと判断する理由を適切に言語化できる幼児の割合は, 3歳では5.9%, 4歳でも15.0%であったが, 5歳では60.0%となり, 6歳では80.0%に達した.本研究の結果, 統語に対するメタ言語知識は5~6歳で著しく発達することが示唆された.

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© 日本音声言語医学会
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