音声言語医学
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情動的認知の発達が遅れた難聴児
―療育初期の実態と療育終了後の経過―
野中 信之越智 啓子大森 千代美高橋 伴子丸山 由佳漆原 省三酒井 俊一中島 誠川野 通夫
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2003 年 44 巻 4 号 p. 264-273

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抄録

子どもが言語を獲得する基盤として情動的認知が重要である.特に障害児のなかには情動的認知の発達が遅れた症例が多い.本論文ではその発達が遅れた難聴児4例と, 比較症例としてその発達が正常であった難聴児1例の心身の発達の特徴と療育終了後の経過を検討した.
情動的認知の発達が遅れた難聴4症例の心身の発達の特徴は, 乳児期に母親にあやしてもらうことが少ない, 人見知りがない, 一人で遊ぶ傾向が強いなどがあった.4例中3例は言語獲得ができず, 通常の小学校への適応が困難であった.残る1例は早期に情動的認知の遅れを挽回し, 正常言語を獲得し, 普通学級に適応した.療育当初から情動的認知の発達が正常であった比較症例としての1例は言語獲得も可能であり, 普通小学校に就学した.
情動的認知が言語獲得の基盤として重要かつ不可欠であることを再確認し, 療育開始時にその発達が不十分な症例は, 早期に情動的認知の発達を図ることが重要である.

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© 日本音声言語医学会
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