2003 年 44 巻 4 号 p. 315-320
就学前の5歳児の統語的知識を含んだ文理解能力を測定するために, 文を口頭で提示し, それに対して口頭で質問する聴覚性文理解テストを作成した.このテストを32名の小児に行った結果, 得点が典型的な正規分布を示し, 文理解能力の測定ができそうであることがわかった.また, パス解析の結果, 聴覚性文理解テストは, 豊富な語彙知識と, 単語をたくさん覚えておくという2つの側面を兼ね備えた複合的な能力を測定していると考えられる.興味深いことに, 仮名の読みの得点が高くても, 聴覚性文理解がそれに比べて低い場合と, その逆に, 聴覚性文理解が高得点であっても, 仮名がほとんど読めない小児もいた.聴覚性文理解テストは, 仮名の読みに求められる能力とは異なる側面の言語能力を測定している可能性が強い.