音声言語医学
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情動的認知の発達が遅れた重度難聴児
―遊びの発達と言語獲得の特徴, 療育の要点―
野中 信之越智 啓子大森 千代美高橋 伴子丸山 由佳漆原 省三酒井 俊一中島 誠川野 通夫
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2004 年 45 巻 2 号 p. 106-114

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抄録

ことぼと対人的適応の基盤である情動的認知の発達が遅れた難聴児は, 遊び相手に視線を向けること (注視行動) が少なく, 言語獲得が困難である.本研究ではそのような症例で重度難聴の子どもの遊びと言語獲得の特徴, そして療育の要点を情動的認知の発達が良好な症例と比較した.その結果, 情動的認知の発達が遅れた子どもの当初は, 相手と関わることが少ない, 象徴遊びの出現が遅い, 一人遊びとしての象徴遊びが多い, イメージの展開が乏しいという特徴があった.しかし本園での療育で, 子どもは相手との関係を能動的につくり出し, それを繰り返し試す行動 (対人的循環反応) や注視行動を示すようになり, やがて「対人的循環反応と象徴遊びとの中間型」の性質をもつ遊びの出現を経て相手遊びとしての象徴遊びが増加に転じ, 平行してことばが増加した.しかしその言語獲得には, 3ヵ年を要するなど緩慢で, 良好例が読話での言語理解にいたったのに比べ, 遅滞例は指文字・身振り・手話を必要とした.

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© 日本音声言語医学会
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