音声言語医学
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抽象語理解力検査の開発に関する研究
―矢語症例への適用―
春原 則子宇野 彰山中 克夫金子 真人
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2004 年 45 巻 2 号 p. 99-105

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抄録

軽度理解力障害の検出を目的に, 失語症者にとって一般的に理解がより困難とされる抽象語を用いた検査法を開発した.445名の健常者のデータに基づいて健常ノルムを作成し, SLTAの「口頭命令に従う」「書字命令に従う」の得点が良好な失語症者32名の結果と比較した.同時に失語症者や家族などから理解力障害に伴う困難さを, また担当の言語聴覚士 (ST) から臨床上の理解力障害の程度について聞き取り調査を行った.その結果, 対象とした失語症例は, 本検査の視覚的な理解については健常者と同程度に可能だったが, 聴覚的な理解については健常者の-2SDを下回る者がいた.また, 失語症者自身や家族などが理解力障害に伴う困難さを感じている群とそうでない群との間, STの臨床的な評価に基づく理解力障害の重症度群間で本検査の得点に相違が見られ, 本検査はこれらを反映しうる可能性が示された.

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© 日本音声言語医学会
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