音声言語医学
Online ISSN : 1884-3646
Print ISSN : 0030-2813
ISSN-L : 0030-2813
タギングシネMRIによる母音連鎖/ei/の舌内部変形の計測
高野 佐代子本多 清志
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 47 巻 3 号 p. 283-290

詳細
抄録

母音発話における外舌筋と内舌筋の機能を再評価するためタギングシネMRIと呼ばれる磁気共鳴画像法を用いて舌内組織の3次元的な変形を計測し, 母音/i/の生成にかかわる舌筋の役割を推定した.中舌母音/e/を起点とする母音連鎖/ei/について矢状面2スライス-60フレーム/秒, 水平断面10スライス-12フレーム/秒の撮像を行った.舌組織の3次元変形についてタグ陰影の分析を行った結果, /i/の調音において, 前半部の組織には前上方への移動および正中方向への圧縮, 後半部の組織には前下方向への移動および左右方向へ膨張が明らかになった.また舌組織の時間的な推移を比較した結果, 上半部は下半部に比べて移動量が大きく, 移動開始時期が早く, 移動速度も大きかった.以上の結果は, 母音/i/の舌変形にオトガイ舌筋前部および後部筋束が関与するという従来の機構のみでは説明できず, 舌端部の組織を左右から正中方向に狭小化させ, 前上方へ向かう高速の変位をもたらす内舌筋 (主として横舌筋) の関与があることが推測された.

著者関連情報
© 日本音声言語医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top