音声言語医学
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声帯内脂肪注入術の現状と将来
―声帯内脂肪注入術と喉頭枠組み手術の音声比較―
梅野 博仁佐藤 公則白水 英貴千年 俊一中島 格
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2007 年 48 巻 2 号 p. 163-170

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抄録

声帯内脂肪注入術の注入物質は自家組織で安全であり, 病態に応じて注入部位と注入量を自在に変えられ, しかも, 声帯内脂肪注入術後の音声は良好であると著者らは報告してきた.そこで, 実際に当科で施行した声帯内脂肪注入術57症例と喉頭枠組み手術45症例の術前・後の音声を比較検討した.音声検査のパラメータにはMPT, MFRc, PPQ, APQ, NNEaを用いた.その結果, 術後は両術式ともすべてのパラメータで有意な改善を認めた.しかし, 術前間のパラメータはMPT以外で脂肪注入群が枠組み手術群より有意に良好であり, 術後間ではすべてのパラメータで脂肪注入群が有意に良好であった.また, 脂肪注入群の術後音声は, 偏倚が少ない安定した良好な音声が得られた.これは, 注入部位と量の工夫に加え, 採取した脂肪細胞に損傷がなく, 脂肪細胞を取り囲む細網線維構造が声帯粘膜固有層浅層の細網線維がなす細胞外マトリックス骨格構造と類似しているためと考えられた.

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© 日本音声言語医学会
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