音声言語医学
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声帯内BIOPEX注入術
大久保 啓介齋藤 康一郎藤峰 武克塩谷 彰浩
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2007 年 48 巻 2 号 p. 171-177

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抄録

リン酸カルシウム骨ペースト (BIOPEX) は, 注入時はペースト状であるが, 水和反応によって経時的にハイドロキシアパタイトに変化する医療用材料である.異物反応が軽微で長期的にほとんど吸収されず, 準備が容易であり, 声帯内注入物質として非常に多くの利点がある.本術式は低侵襲, 安全で, 整容的に優れ, 術翌日から発声, 摂食, 退院が可能である.本術式の基本的な手術適応は一側性声帯麻痺である.注入部位は声帯膜様部中央外側の甲状披裂筋と甲状軟骨の問, もしくは甲状披裂筋内に注入している.後部声門間隙が大きい症例は, 声帯突起外側にも注入している.臨床応用を開始してから3年半経過し, 現在まで38症例経験したが, CT上全例BIOPEXの吸収を認めず, 音声機能検査上も有意な改善を認め経過良好である.声帯外側に硬化性物質を注入し, 声帯の内方移動を図る本術式は, 「喉頭の内腔から行う甲状軟骨形成術I型」と考えている.

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© 日本音声言語医学会
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