音声言語医学
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小舌症と小下顎症を伴う1症例の構音の検討
―下顎歯列弓拡大後の変化について―
和田 満美子阿部 雅子松崎 雅子森 良之須佐美 隆史高戸 毅
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2008 年 49 巻 1 号 p. 14-22

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抄録

小舌症と小下顎症を伴う症例 (23歳, 女性) に対して, 術前および術後の歯科矯正治療と下顎歯列弓狭窄に対する拡大手術による外科的矯正治療を行い, 治療過程の構音の変化と咀嚼機能について検討した.
1.構音検査では, 治療前と同様に/t, d, n, r/は舌と口蓋後方でつくられる口蓋化構音に近い歪み音, /s, dz, ts/は上顎前歯と下口唇で音がつくられる/f, v, pf/に近い歪み音であった.構音動態としては, 治療前と比べ構音位置や構音方法に明らかな差は見られなかった.
2.語音発語明瞭度は, 術後6ヵ月で低下したものの, 術後1年3ヵ月で治療前とほぼ同程度にまで改善していた.治療過程で口唇音や母音の異聴が一時的に増加したが改善し, 異聴傾向としては治療前とほぼ同様であった.
3.文章了解度は, 術後6ヵ月で低下したものの, 術後9ヵ月で治療前とほぼ同程度にまで改善していた.
4.咀嚼機能にも改善が見られた.

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