2008 年 49 巻 4 号 p. 265-272
言語発達遅滞を伴った粘膜下口蓋裂児1症例の構音指導経過を整理し, 障害の背景について検討した.3歳11ヵ月で初回口蓋形成術が施行されたが, 鼻咽腔閉鎖機能不全が残存した.言語は発達したが不明瞭な構音の状態が続き, 構音の特徴としては (1) 呼気の鼻漏出による子音の歪み (2) 声門破裂音の残存 (3) 構音可能な音が少ない (4) 構音可能な音の一貫性のない誤り (5) 音節の省略 (6) 音読時に構音が改善することが挙げられた. (1) ~ (3) は鼻咽腔閉鎖機能不全の影響が考えられ, 5歳10ヵ月時再手術の適応となった.また (3) には運動の拙劣さが, (2) (4) ~ (6) の背景には音韻意識の悪さが考えられた.そこで構音器官の位置づけ法を用いた子音の生成訓練に加え音韻意識の形成を目的とした指導も併せて行った.その結果8歳時には会話明瞭度は初診時の4から2へと改善が見られた.以上より口蓋裂児の診療にあたっては, 鼻咽腔閉鎖機能だけではなく, 音韻意識の発達も考慮して評価し, 必要に応じてその指導をすることの重要性が示唆された.