2006 年 47 巻 3 号 p. 179-184
病原性真菌の細胞壁最外層は, マンナン, ガラクトマンナンなどの親水性の多糖で被われており, 抗原性だけでなく宿主細胞との接着にも関与している. Candida albicans マンナンは, 主鎖がα-1,6結合, 側鎖はα-1,2結合およびα-1,3結合マンノースで構成された基本骨格を持っているが, さらに側鎖にα-1,6結合マンノースによる分岐構造, β-1,2結合マンノース, およびリン酸基の存在する複雑な構造であった. Candida 属マンナン中のβ-1,2結合マンノースは, その結合の様式から1) リン酸基を介してマンナンに置換するもの, 2) 側鎖のα-1,2結合マンノースに置換するもの, 3) 側鎖のα-1,3結合マンノースに置換するもの, という3種類が存在していた. β-1,2結合で連なった側鎖はコンパクトなヘリックス構造をとっていた. この特徴がNMR解析での特殊な化学シフト値や強い抗原性を示す原因と考えられる. これらの特徴を二次元NMRシグナルから読み取ることにより, 各種のマンナンの構造が非破壊的にもかなり解析できるようになった.