日本医真菌学会雑誌
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原著
長崎地方のスポロトリコーシス16例の検討
-2002年以降の集計と2001年までの集計例との比較検討-
竹中 基佐藤 伸一西本 勝太郎
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2009 年 50 巻 2 号 p. 101-108

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抄録

2002年から2007年までに診断が確定した長崎地方でのスポロトリコーシス16例および今までに報告された138例を含めた155例について,1951年 ∼ 2001年(143例)と2002年 ∼ 2007年(12例)に分けて検討した.年平均発症率は,1951年 ∼ 2001年が2.8例(診断体制の整った1970年以降では4.2例),2002年 ∼ 2007年が2.0例と減少傾向が認められた.臨床型は,2001年以前の症例では,限局性皮膚型(62.1%)がリンパ管型(37.9%)より明らかに多かったが,近年では両型が同数であった.また,50歳以上の割合が72.1%から91.7%と増加していた.特に,2001年以降は,10歳未満の症例はなく,逆に90歳以上の症例が2例みられた.地理的分布では,元来,島原半島に多くみられていたが,近年はさらに増加していた(26.8% → 33.3%).これらの疫学的変遷の理由について若干の考察を加えた.また,治療については,1994年までは,99.1%の症例でヨウ化カリウム(KI)が使用されていたが,1995年以降は,イトラコナゾール(ITZ)の使用が半数以上であった.KI単独内服は1995年以降も20%の症例で行われていた.その使用は,1995年から2000年にかけては,8.3%と著減していたが,2001年以降は25.0%と再び増加していた.治癒例の平均薬剤内服期間は,KI(53例)で10.9週,ITZ(9例)で17.0週とKIの内服期間が明らかに短かった.

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© 2009 日本医真菌学会
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