日本医真菌学会雑誌
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総説
白癬菌の感染メカニズムの解析に役立つ効率的遺伝子操作技術の構築
山田 剛
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2010 年 51 巻 2 号 p. 87-92

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抄録

白癬に関する研究は臨床の領域が先行していた感があるが,基礎領域の研究も徐々に行われるようになってきた.原因菌である皮膚糸状菌(白癬菌)の感染メカニズムの解明を目的に,大規模(網羅的)な遺伝子解析が展開されている.また,代表的なヒト好性白癬菌である Trichophyton rubrum や動物好性白癬菌である Microsporum canis などでは,ゲノムシーケンシングプロジェクトが進められている.このような解析を通じて得られた情報は,個々の遺伝子の機能に関する詳細な解析に役立てられていくものと考えられる.遺伝子の機能を解析する時,真菌では遺伝子破壊株に代表される変異体がしばしば利用される.しかし,白癬菌の遺伝子操作に利用できるツールの整備は遅れており,遺伝子破壊株を利用した解析事例も少ない.このような状況の中,筆者の所属する帝京大学医真菌研究センターでは,代表的なヒト好性白癬菌である T. mentagrophytes を用いて,遺伝子破壊株などを作り出すためのツールの整備を進めてきた.

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© 2010 日本医真菌学会
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