日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 1882-0476
Print ISSN : 0916-4804
ISSN-L : 0916-4804
原著
再生不良性貧血に合併した Nocardia farcinica による皮下膿瘍の1例
横田 昌川辺 桂太郎山田 秀樹布村 眞季
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 51 巻 2 号 p. 93-97

詳細
抄録

再生不良性貧血治療中の44歳男性に発症した,Nocardia farcinica 感染による皮下膿瘍を経験した.8年前に再生不良性貧血を発症し,抗胸腺細胞グロブリン療法により治療されたが,効果は一時的であった.抑鬱傾向のため骨髄移植の適応なしと判断され,以後3年間にわたりプレドニゾロンとシクロスポリンを投与されていたが,効果不十分であり,定期的な赤血球と血小板の輸血が必要であった.2008年4月,誘因なく左上肢に疼痛を伴う腫脹が出現した.肉眼的に刺傷や受傷所見はなく,抗生物質の投与を開始したが,増悪し自壊排膿もみられたため,入院の上切開排膿を行い,抗生物質による治療を開始した.系統学的解析や生化学性状より起因病原体は Nocardia farcinica と判明した.抗生物質の投与による治療により肺や中枢をはじめとする内臓へ播種することなく,1年間の投薬を終了した.一方,我々は,医中誌Web(医学中央雑誌刊行会)で検索し得た2000年から2008年までのわが国での報告92例のノカルジア症の疫学および臨床的特徴を検討した.この結果によれば,全身性ノカルジア症はプレドニゾロン,シクロスポリンやアザチオプリンといった免疫抑制剤の使用が最大の危険因子であることが明らかとなった.こうした免疫抑制状態ではノカルジア症を念頭に置く必要性がある.

著者関連情報
© 2010 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top