日本医真菌学会雑誌
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総説
病原性放線菌の分類学的研究と新たな研究展開
三上 襄
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2010 年 51 巻 4 号 p. 179-192

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抄録

放線菌による疾患は,易感染者の増加と相まって本邦においても増加傾向にある.病原性放線菌の代表的な菌種であるNocardia farcinica の全ゲノム解析結果が2004年に公開された.全ゲノム情報,さらには遺伝子や細胞構成成分の解析技術の進歩は,病原菌の分類学にも大きな影響を与え,それまで20種以下であったNocardia の菌種は,現在では68種にも及んでいる.その約1/4が筆者らのグループが提案した新菌種である.全ゲノム情報がもたらした結果としてのNocardia の新しい分類基準として,gyrB 遺伝子の解析に基づく新しい系統研究法などの提案や,それら手法の分類における重要性を指摘した.またNocardia のゲノム情報が示す病原因子の産生機構や有用産物の産生に関与する遺伝子について概説した.実際に筆者らが発見したNocardia が産生する新しい活性物質や新規な構造をもつ抗生物質などの二次代謝産物について紹介した.Nocardia が示す独特の薬剤耐性機構,特に抗結核剤であるrifampicinの不活化に関する新しい分子機構の発見に至った経過など,筆者らが行った研究について将来への検討課題も含めて紹介した.

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© 2010 日本医真菌学会
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