真菌と真菌症
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ケトコナゾールによるカンジダ症の治療
森 健浜本 恒男日比野 順子饗庭 三代治八巻 悟郎渡辺 一功池本 秀雄小沼 一郎
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1984 年 25 巻 3 号 p. 257-273

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抄録

カンジダ症12例に対しケトコナゾール200mg/日を投与し, 治療効果および治療上の問題点について検討した. 口腔および食道カンジダ症計7例の表在性カンジダ症には, 極めて有効で, とくに口腔病変は早ければ投与2日後, 遅くとも7日以内に消失した. 経静脈的高カロリー栄養または持続点滴療法中に発症したカンジダ血症では, 本剤投与後解熱し, 血液培養で菌を検出しなくなつた. しかし投与11日目にジギタリス中毒後の急性腎不全を来して死亡した症例では, 基礎疾患 (悪性関節リウマチ) による肺血管病変が存在し, その血管内に真菌要素を認めた. 基礎疾患による locus minoris resistentiae が存在する場合には, その部位に転移巣を形成して治療が困難になるため, 早期診断治療が必要である. 他の1例では点滴部位に血栓性静脈炎があり, 本剤の投与に加えて, 病変部の切開および病変表在静脈の切除を行つて治癒した. カンジダ髄膜炎1例では, 本剤とフルシトシンの併用により治癒せしめたが, ドレナージなどの手技に合併することが多く, ドレーンの入れ換えや挿入部位の変更が必要である. 本剤は他の抗真菌剤と同様に髄液中への移行が少ないが, 副作用を認めない場合には, 800~1,200mg/日に増すか, 他の抗真菌剤との併用を考えるべきである. カンジダ尿症2例に対して良好な結果を得たが, 今後検討する必要がある.
今回の経験では, 重篤な副作用を認めず, カンジダ症に対して有効な薬剤といえる.

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© 日本医真菌学会
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