1989 年 30 巻 4 号 p. 234-240
ヒトの足白癬に良く似た実験的モルモット足白癬をモデルとして病変形成に影響を与える菌側, 宿主側の要因について検討した.
実験的モルモット足白癬で炎症性組織反応をおこす T. mentagrophytes 好獣株SM-110は角層全層顆粒層直上まで侵入し, 感染菌量も多く, 接種24時間後にはすでに角層内に感染菌が認められた. 炎症性組織反応をおこさない T. mentagrophytes 好人株NTM-105は角層の上2/3までしか侵入せず, 感染菌量は比較的少なく, 3日後に接種部位の一部に少量の感染菌が認められた. T. mentagrophytes 好獣株SM-110, VUT-85001, VUT-85002, VUT-85003は, 好人株NTM-105, SM-8500に比べて毛髪穿孔テストにおいて穿孔率が高く, より大型で明瞭な穿孔を形成する. また, ウシ血清アルブミン分解能も好獣株の方が高い. 以上より, 足白癬の病変形成に菌の角層への侵入力が重要で, それには菌の蛋白分解活性が働いていることが示唆された.
実験的足白癬の病変形成におよぼす宿主側の要因として, 細胞性免疫に注目し皮内反応とリンパ球幼若化反応を比較してみたが, いずれもSM-110株接種群で反応が強い傾向があり, 足白癬の病変形成に細胞性免疫反応が関与していることが示唆された.