国立がんセンターにおける1962年から1990年12月までの悪性腫瘍の全剖検数は7,283例である.この中,重篤なる日和見感染を伴う剖検数は3,179例(43.6%)に及んでいるが,この内訳は細菌性肺炎が最も多く,日和見感染の78.3%(2,490例)を占め,次いで真菌感染症例の12.2%(388例)となっている.この真菌症例の内訳はカンジダ症が最も多く,71.4%を占め,次いでアスペルギルス症の19.1%,クリプトコックス症の6.9%,ムーコル症の2.6%となっている.これらの感染臓器は真菌の種類によって異なり,カンジダ症では食道,胃,肺,小腸,口腔に多く,また全身感染も少なくなかった.その他の真菌感染は肺に多く認められた.一方,真菌感染が見られた悪性腫瘍は多種に及んでいるが,一般に造血腫瘍が多く,カンジダ症を例に取れば32.5%を占めている.これらの感染因子としては放射線療法や化学療法,あるいは病状の悪化に伴う患者の免疫能の低下が挙げられる.