日本医真菌学会雑誌
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真菌症の迅速診断
細胞診による真菌症診断の問題点と有用性
渋谷 和俊田口 勝二
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1992 年 33 巻 4 号 p. 461-471

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抄録

細胞診は,その迅速性や簡便性,あるいは応用範囲の広さからみて,病理形態学的な診断法の中では,特筆すべきものである.今回,この細胞診が,真菌症の診断に関与する有用性と問題点について,代表的な症例を提示しつつ,検討を行なった.細胞診は,標本から抽出される情報量の多さや手技の簡便性あるいは迅速性等の利点を持ち,広く普及した検査法で,真菌症の診断にも有効な場合が多い.この一方で,喀痰細胞診等のように検体が常在菌叢を通過する場合,真菌が検出されても診断に直接結びつかないこと,ある条件下で仮に真菌を強く疑う微生物が検出されても,特徴的な形態像を得られず,菌種の判定ができないために,診断を確定することが難しいことが多いといった問題点も指摘された.
しかし,細胞診の特性や採取法を慎重に選択し,臨床像を十分に考慮するならば,細胞診で得られた情報は,真菌症の診断に,極めて有用なものであると考えられた.さらに,今回,腟擦過細胞診を材料として,カンジダ性膣炎の原因菌の推定を試みたが,この結果,標本上で観察される菌は,それぞれの菌種に特徴的な形態像を呈しており,細胞診のみで比較的精度の高い菌種の推定が可能と考えられた.

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