日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 1882-0476
Print ISSN : 0916-4804
ISSN-L : 0916-4804
真菌症の早期発見の試み
望月 真弓久米 光鶴田 陽和朝長 文弥奥平 雅彦
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 34 巻 3 号 p. 265-273

詳細
抄録

compromised hostのうちとくに内臓真菌症を高率に続発する白血病と悪性リンパ腫を対象として内臓真菌症の発生を宿主の感染免疫抵抗性の低下の程度から有効に予知する方法を試案し提起した. すなわち, 白血病剖検例に関して各種臨床検査値を調査し, それらの検査項目 (変数) について真菌感染例と非真菌感染例の2群間の判別分析を行った. その結果, 末梢血中好中球数 (X2), 末梢血中単球数 (X4), 総白血球数1000/μl以下の連続した病日数 (X6) および体温 (W1) の4変数からなる次の線形判別式 (Z1) が得られた.
Z1=-100.5427-0.00401× (X2) -0.01057× (X4) +0.05622× (X6) +2.61331× (W1)
本式により白血病剖検例の内臓真菌症例21例と非真菌症例19例を含む計40例中38例が正しく判別された (判別正解率95%).
また, 白血病臨床例においては, Z1が7日以上連続してプラスを示した場合に内臓真菌症例と判別するとした時, 44例中39例が正しく判別された.
一方, 悪性リンパ腫剖検例について同じ変数を用いて同様の判別分析を行った結果, 次の線形判別式 (Z2) が得られた.
Z2=-6.3247-0.00037× (X2) -0.00883× (X4) +0.20138× (X6) +0.14510× (W1)
本式により悪性リンパ腫剖検例の内臓真菌症例7例と非真菌症例13例の計20例中16例が正しく判別された (判別正解率80%).
以上より, ここに示した易感染性判別式が内臓真菌症の予知に極めて有用であり, 臨床応用に価することが確認された.

著者関連情報
© 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top