抄録
Aspergillus nigerによる気管支肺アスペルギルス症の1剖検例を報告した.症例は数年にわたって子宮平滑筋肉腫の切除再発を繰り返し,腎不全で死亡した64歳,女性である.
剖検で左肺上下葉にアスペルギルス症が認められた。左肺下葉病変は典型的な侵襲型アスペルギルス症であった.左肺上葉では気管支に壁在性菌糸増殖と分生子頭形成を認め,周囲肺組織へも侵襲性に菌糸が増殖していた.培養は施行されなかったが,分生子頭の形態的特徴からAspergillus nigerと考えられた.左肺上葉の病巣は,colonization様の気道内真菌増殖に侵襲型アスペルギルス症が混在したものと考えられた.本症例は侵襲型と非侵襲型の中間型である半侵襲型の病態を考察する上で貴重な症例と思われる.