1995 年 36 巻 4 号 p. 297-302
脂漏性皮膚炎患者より分離されたMalassezia furfurの生菌浮遊液(0.2g/ml)0.2mlを,剃毛したモルモットの背部と耳介後面,および,C3Hマウス並びにBALB/c nu-nuヌードマウスの背部に1日1回連日塗布した.モルモットについては,生菌試料の他,菌体抽出分画液,Dixon液体培地,およびエベラクトンBを添加した生菌試料を各々連日塗布した.モルモットへの生菌試料の塗布の結果は,7日目頃より脂漏性皮膚炎類似の鱗屑を伴う紅斑が出現し,25日目には背部12部位中9部位,耳介後面12部位中10部位に同様の病変を認めた.今回初めて塗布した初回塗布群に比べ,以前に塗布実験を行い,今回再び塗布した再塗布群に,より早期に病変が生じた.エステラーゼ阻害物質であるエベラクトンBの添加によりこの病変形成は抑制された.ヌードマウスへの結果は,背部に粃糠様鱗屑が認められたが,C3Hマウスには病変が形成されなかった.モルモットへの菌体抽出分画およびDixon液体培地の塗布の結果は,いずれも病変の形成に至らなかった.
以上の結果から,M.furfurが脂漏性皮膚炎の一因であることが強く示唆され,さらに,その成因として,接触アレルギーの他,菌による皮脂の分解産物の直接作用も関与していることが推測された.