日本医真菌学会雑誌
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Madurella griseaによる足菌腫の1例
赤松 まゆみ石井 康子松尾 聿朗大城戸 宗男堤 寛加藤 禮三
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キーワード: 足菌腫, 黒色顆粒
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1995 年 36 巻 4 号 p. 321-325

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抄録

46歳,男性.初診の約20年前から右足関節外果の小さい皮下腫瘤に気づいていた.自覚症状がないため放置していたが,腫瘤が急激に増大したため受診した.腫瘤は,直径2×1.5cmの淡紅色,軽度隆起した硬い皮下腫瘤で,一部に面靤様皮疹を認めた.組織学的検査では,真皮にPAS,Grocott染色に陽性のセメント様物質を中心とした肉芽腫性病巣が散在していた.生検時に排出された多数の黒色顆粒と組織片をサブロー培地で培養したところ,それらのいずれからも黒色の真菌集落を得た.菌の特徴は,1) 組織内顆粒は直径1mm大の黒色で硬い,2) 分離菌の集落の表面は灰褐色,短絨毛状,裏面は黒色,3) 培地への色素拡散は殆どない,4) 分生子は容易に産生されず,5)発育に温度依存がある,室温(約27℃),30℃の順に発育は良好,37℃では発育せず,であった.以上の結果とexoantigen test1)より,Madurella griseaと同定した.病変部は全摘術にて完治した.本症例は,本邦での同菌種による足菌腫の第1例である.

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