日本医真菌学会雑誌
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皮膚真菌症治療薬の臨床評価
Neutral redを用いた解析
仲 弥
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キーワード: 抗真菌剤, 治療効果
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1996 年 37 巻 4 号 p. 211-215

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抄録

我が国では現在,浅在性皮膚真菌症に対する抗真菌剤の治療効果の判定には鱗屑中の菌要素の有無が重要視され,培養陰性でも直接鏡検で菌要素が認められる場合,真菌学的効果はないものと判断されている.しかし,我々は白癬菌が抗真菌剤に暴露された場合,viabilityを失っても菌要素は菌糸の形態を残していることを超生体染色色素であるneutral redを用いたin vitroの実験において確認した.また白癬,皮膚カンジダ症,癜風患者鱗屑中の菌要素のviabilityをneutral redを用いて検討し,鱗屑中に認められる菌要素の中にはviabilityを失ったものが含まれているということを示した.そして抗真菌剤外用時の鱗屑中白癬菌のviabilityの経時的変化をneutral red染色と培養を用いて比較検討することにより,鱗屑中白癬菌のneutral red染色が抗真菌剤の有効性の評価に有用であることを示すとともに,菌要素陰性化率とneutral red染色陰性化率・培養陰性化率の間に明らかな解離を見出した.
以上より抗真菌剤の効果判定においては,鱗屑中の菌要素の有無だけではなく,neutral red染色などを用いてこの菌要素のviabilityを評価することが重要と思われる.かかる意味においても鱗屑中菌要素のneutral red染色は浅在性真菌症患者の診療上有益な方法と思われる.

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