日本医真菌学会雑誌
Online ISSN : 1882-0476
Print ISSN : 0916-4804
ISSN-L : 0916-4804
内臓真菌症治療薬の臨床評価
渡辺 一功
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 37 巻 4 号 p. 217-222

詳細
抄録

過去十数年の間に新規の抗真菌剤の開発がなされてきたが,アムホテリシンB(AMPH)はその強い副作用にかかわらず,今日でも確定診断された重篤な深在性真菌症にはstandard therapyとして使用されているのが現状である.
現在,本邦で入手可能な深在性真菌症に対する抗真菌剤はAMPH,フルシトシン(5-FC),ミコナゾール(MCZ),フルコナゾール(FLCZ),イトラコナゾール(ITCZ)の5剤のみである.
5-FCは水溶性であり,経口での吸収はよいが,抗真菌スペクトルが狭く,単独使用では耐性菌の発生が多く,多くの場合はAMPHと併用される.MCZは本邦で最も早く使用されたアゾール系抗真菌剤であるが,他に副作用の少ないアゾール系抗真菌剤が開発されたため使用量は最近では減少傾向にある.FLCZは1989年より本邦でも使用可能になった新規のトリアゾール系抗真菌剤であるが,ケトコナゾール(KCZ:本邦未発売)よりも副作用が少なく,静注用,経口用の製品があり,現在,本邦で汎用されているが,AIDS患者における,特にカンジダ属の耐性菌の問題,また,C. krusei, C. glabrataなどでの低感受性菌の問題がある.
ITCZはFLCZと異なり,アスペルギルス属に対する有効性が期待されている.
新規の抗真菌剤の開発が試みられているが,未だ実用化されるには時間が必要であり,現存する抗真菌剤の投与方法,併用療法も含め,今後の深在性真菌症の治療の発展に期待したい.

著者関連情報
© 日本医真菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top