日本医真菌学会雑誌
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共同浴場利用後の非罹患者の足底からの皮膚糸状菌の分離-複数利用による個人,男女の比較-
加藤 卓朗木村 京子谷口 裕子丸山 隆児西岡 清
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1996 年 37 巻 4 号 p. 223-227

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抄録

足底を直接圧抵するFoot-press培養法(FP法)を用いて,共同浴場を利用後の非罹患者の足底から皮膚糸状菌の分離を試みた.対象施設は温泉旅館2施設,いわゆる健康ランドと銭湯1施設ずつにある共同浴場で,各施設男女2名ずつを被験者とした.まず,共同浴場利用前にはFP法で被験者の足底から皮膚糸状菌は分離されなかった.次に通常の方法で浴場を利用後,再度FP法を行った.その結果,温泉旅館Iでは男性2名のみが陽性で,合計54コロニー,温泉旅館IIは男性2名,女性1名が陽性で合計28コロニー,健康ランドは男性2名,女性1名が陽性で合計25コロニー,銭湯は全員陽性で合計130コロニーの皮膚糸状菌が分離された.4施設合わせると男性は全員陽性で,合計230コロニーであったが,女性は4名陽性で,合計集落数も7コロニーと男性より少なかった.一方,菌種別の分離率をみると,Trichophyton rubrum, T. mentagrophytesともに4施設すべてから分離され,合計集落数は61と176コロニーであった.また,実験終了後にいずれの被験者も足白癬を発病しなかった.以上より同施設,同時期の共同浴場では男性用の環境中により多くの皮膚糸状菌が生存していること,および裸足で利用すると誰にでも足底に菌は付着するが,発病することはまれであることがわかった.

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