日本医真菌学会雑誌
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白癬病巣における免疫応答
古賀 哲也
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1997 年 38 巻 1 号 p. 29-31

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抄録

白癬病巣における免疫応答についてサイトカインレベルで,とくに遅延型過敏反応(DTH)に深く関与するIFN-γ産生について検討した結果,中心治癒傾向のある辺縁隆起性環状紅斑,小水疱などの炎症症状を伴う白癬患者末梢血単核球は白癬菌抗原(トリコフィチン)刺激によりIFN-γを産生した.一方,中心治癒傾向のない落屑性紅斑,角質増殖など比較的炎症症状の乏しい慢性の経過をたどる白癬患者末梢血単核球のIFN-γ産生は低下していた.このことより,前者の臨床像は主としてDTHによる菌の排除機構が働いている像であり,また後者の臨床像は主として表皮角化亢進に伴う落屑による菌の排除機構が働いている像と考えられた.
また培養表皮角化細胞はトリコフィチン刺激によりIL-8の産生を増強し,このことが白癬にみられる角層下膿疱の形成に関与している可能性が考えられた.
このように白癬の臨床像形成および感染防御には,白癬菌抗原に対するDTHと白癬菌抗原による表皮角化細胞の刺激にもとづく刺激性皮膚炎が,重要な役割を担っていることが示唆された.

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