日本医真菌学会雑誌
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過敏性肺炎の病態と治療
安藤 正幸
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2000 年 41 巻 3 号 p. 137-141

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抄録

過敏性肺炎は有機あるいは無機物質を反復吸入しているうちに,これらの抗原に感作されて起こる肉芽腫性間質性肺炎である.過敏性肺炎には50以上の疾患があるが,その頻度は国により,また地域により異なる.欧米では農夫肺,鳥飼病,加湿器肺,空調病が多いが,わが国では夏型過敏性肺炎が大半を占める.夏型過敏性肺炎は高温多湿な条件下に家屋に増殖するトリコスポロン・アサヒおよびトリコスポロン・ムコイデスによって起こる家屋に関連した疾患である.その多糖体抗原はマンナンを主鎖とし,マンノース,キシロース,グルクロン酸からなる短い側鎖を有する.本症の発症には免疫複合体による免疫反応とT細胞性免疫反応の両方が関与している.宿主要因としてHLA-DQw3や喫煙がその発症促進ならびに抑制に重要な役割をなしている.トリコキットによる血清中抗トリコスポロン抗体の測定は本症の血清診断にきわめて有用である.環境からのトリコスポロンの除去は本症の再発を防止する.本症は新しい過敏性肺炎であり,その原因抗原であるトリコスポロン・アサヒおよびトリコスポロン・ムコイデスは温帯・亜熱帯地方に広く分布しているので,これらの国々では本症がみられる可能性が大である.

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