2000 年 41 巻 3 号 p. 143-147
接着分子は,個体の発生,組織の形成や生体防御を始めとする多様な生理的機構の維持に関与し,これらの分子の欠損や異常はさまざまな病的な状態を生み出す.特に近年の研究から,リンパ球を含む白血球の血管外移動への接着分子の生理的,病理的関与について多くのことが明らかになってきた.しかし,この分野の研究は著しい進歩をみせている一方,既知の分子のみでは説明できない接着現象や,接着分子でありながらその機能や生理的意義が明らかでない分子が多数存在する.また,接着分子を介したシグナルやその調節機構については不明な点が多い.ここでは,細胞接着分子の特徴について述べるとともに,接着分子研究に関する現在の問題点について触れる.