日本医真菌学会雑誌
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Aspergillus感染成立に関与する好中球の役割
鈴木 和男
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2002 年 43 巻 3 号 p. 153-160

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抄録

真菌感染は, 好中球機能低下による日和見感染と深くかかわっていることが明らかになってきている.好中球のもつlysosome酵素のmyeloperoxidase (MPO) と活性酸素産生酵素NADPH oxidaseの欠損した患者の好中球機能の解析や, これら遺伝子のノックアウトマウスを用いたin vivoの感染実験の解析から, ラジカル酸素産生能の低下が真菌感染抵抗性の低下をもたらしていることが解明された.MPO酵素欠損患者ではCandida albicansの感染抵抗が低下していることが欧米で報告されている.さらに, われわれが作製したMPO遺伝子ノックアウトマウスによるinvivoの感染実験からも一義的にC. albicansへの感染抵抗が低下していることが判明している.一方, NADPH oxidase欠損は, 慢性肉芽腫症 (CGD) となって重篤化する疾患で, Aspergillus感染への抵抗性が極度に低下していることが特徴である.NADPH oxidaseは, 膜蛋白質cytochrome b558と細胞質蛋白質p47phox, p67phox, p40phox等の分子群からなり, 好中球の活性化によって, これら分子が膜に集合してユニットとなって活性を発現する.また, 真菌の慢性的な感染は, 血管炎やアレルギーの誘発にもつながっている。

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