日本医真菌学会雑誌
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血清診断法 基礎と臨床
前崎 繁文
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2002 年 43 巻 4 号 p. 233-237

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抄録

深在性真菌症の血清診断は欧米に比較して本邦において研究開発が進み, その有用性に関する多くの臨床データの集積が報告されている. しかしながら, このように血清診断が広く臨床応用されることによって, 偽陽性症例の問題や血清診断のみに基づく不必要な抗真菌薬の投与などの新たな臨床的問題も現れている. (1,3)-β-D-グルカンは深在性真菌症が疑われた患者のスクリーニング検査として有用である. しかし, 血清中の極めて微量な(1,3)-β-D-グルカンを測定するため, 偽陽性がときに問題となる. 原因真菌に応じた血清診断としては抗原検出法が有用である. カンジダ症ではマンナン抗原, クリプトコックス症では爽膜多糖抗原, アスペルギルス症ではガラクトマンナン抗原などの検出は原因真菌の推定にも有用である. しかし, クリプトコックス症の莢膜多糖抗原検出法を除いては, 感度が不十分であり, 臨床的な有用性には疑問があった. 近年, 主にELISA法を用いた高感度な抗原検出系の研究開発により, より微量の抗原を血清中から検出可能となったが, 特異性や偽陽性症例の問題などからも今後多くの臨床例で検討する必要がある.

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