日本医真菌学会雑誌
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動物に見られる真菌症の現状
中村 遊香
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2003 年 44 巻 4 号 p. 235-238

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抄録

近年,生活環境の著しい変化にともない,動物に見られる真菌感染症の様相も大きな変化を示している.特に,スポロトリクスやヒストプラスマなど,従来我が国で伴侶動物からの報告のなかった疾患が認められるようになり,それらの原因菌による人への感染も危惧されている.また,分子生物学的同定技術の進歩にともない,好人性真菌による動物の真菌症が確認されるようになった.さらに獣医々療技術の急速な進歩により,悪性腫瘍に対する免疫療法,化学療法をはじめ予防獣医学の浸透によって動物の寿命も延長し,高齢動物の日和見感染症として,深在性真菌症の症例数が増加し,獣医療の現場でも人医療と同様の問題が見られるようになっている.また,罹患動物の種類にも変化が見られるようになり,以前は犬や猫の皮膚糸状菌症が人への感染源として重要視されていたが,小型のハムスターやモルモットなどの齧歯類,兎などにも注意する必要が生じている.以上のことから,動物に見られる真菌症について,原因菌種,感染動物種,日和見感染における耐性菌出現,抗真菌剤の使用方法との標準化などの問題が山積しており,これらを解決するため迅速で広範な情報交換に基づいた研究の遂行が求められている.

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