日本医真菌学会雑誌
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食品のカビ汚染とリスクアセスメント
宇田川 俊一
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2005 年 46 巻 1 号 p. 11-15

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抄録

アフラトキシンが発見され,食品のマイコトキシン汚染は国際的なリスクとなった.わが国では,2003年5月に食品安全基本法が制定され,内閣府に食品安全委員会が設置されて,食の安全を守るため,リスクアセスメントに取り組んでいる.食品におけるカビ汚染事例をみると,90年代から青果物のポストハーベスト病害,好乾性カビによる常温流通食品の事故,好冷・耐冷性カビによる低温流通食品の事故,耐熱性カビによるPETボトル詰め飲料・レトルト食品など加熱加工食品の事故が急増している.これらのカビによって産生されるマイコトキシンが食品から直接検出された場合は自然汚染といい,経口投与を主とする毒性試験・発癌性試験などと食品の調査に基づく汚染実態を根底にして,FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)がリスクアセスメントを行った後,規制が検討される.この作業は慢性毒性試験における無作用量(NOEL)を基本とし,これにヒトへの安全係数(通常100)を見込んだものが耐容1日摂取量(TDI)として示される.国際規格化はFAO/WHO合同食品規格委員会(CODEX)により進められ,最近ではアフラトキシンM1,オクラトキシンA,デオキシニバレノール,T-2/HT-2トキシン,パツリン,ゼアラレノン,フモニシンBなどのTDIまたは最大基準値が議案になり,順次総会で規格基準が採択されている.わが国でもこれを受けて,デオキシニバレノール(暫定),パツリンの最大基準値が設定された.

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