日本医真菌学会雑誌
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Trichophyton tonsurans感染症の東北地方に於ける現状と治療上の問題点
笠井 達也
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キーワード: 疫学, 家族内感染, 潜伏感染
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2005 年 46 巻 2 号 p. 87-91

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抄録

東北地方におけるTrichophyton tonsuransによる白癬の現状をアンケートにより調査した結果を報告し,臨床上の問題点を指摘した.東北地方の本症は2001年春に始まり,年々増加傾向にある.現在までの症例は疑診例を含めて各県別には山形88,宮城68,秋田4,青森2の計162例で,岩手福島両県からは報告がない.競技別には柔道113,レスリング39,総合格闘技5,剣道,相撲,野球各1,幼小児2,記載なし2であった.年令別では高校生117,専門学校生14,大学生8,社会人7,中学生各6,小学生と未就学児各2,記載なし6であった.家族内感染例は2組5名にみられた.自験例30例では2001年春の1名に始まり,2002年4,2003年15,2004年は11+再発再感染4.柔道25,レスリング3,総合格闘技2.専門学校生14,高校生12,社会人3,大学生1,幼児1であった.再発例の長い例では2年半と1年半の潜伏感染例が認められた.これらの症例を通じての観察から,本菌は感染早期から毛根への侵入が生毛部でも認められることが多く,外用療法のみでは完治しない症例が見られることから,治療上は体部白癬であっても外用のみでなく十分な期間の内服薬の服用を併用する必要性があること,併せて,より確実な診断のためには培養を行うことが重要であることを重ねて強調した.

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